ニュートン力学入門①
今回は、物理学の分野の一つのニュートン力学について、解説したい思います。
高校の物理でやったけど、忘れたという人にもおさらいとして見てほしいと思います。
力学では、物体は質量を持った点すなわち質点として、抽象化されます。つまり、物体の大きさや形、硬さといったものは捨象されるということです。
※は読み飛ばしても構いません。
※抽象化とは、詳細を捨て、本質を抽出することです。人文社会科学でも、このような抽象化は、行われます。『リヴァイアサン』で知られるイギリスの政治哲学者のトマス・ホッブズは社会契約説を説明するために、抽象的な人間像をつくりました。いわゆる自然状態の人間です。そこでは、社会的諸要素(政府、職業、階級、、etc)は、捨象されます。自然状態の人間は、自己保存の本能のみを持つ存在とされ、現在のみならず、将来もまた生存し続けること欲します。自然界の物質は有限であるから、限られた資源をめぐり他者との闘争が起こります。これがすなわち、万人の万人に対する闘争です。
また、自然科学や人文社会科学だけでなく、計算機科学でも抽象化は行われます。プログラミングの現在最も主流のパラダイム(世界観)であるオブジェクト指向のクラスとインスタンスの概念にも見られます。
このように、対象を単純化することで、議論しやすくする抽象化は、あらゆる学問で有用な手段として用いられます。
ちなみに、質点に大きさなどを考慮すると、連続体となります。現実の物体は、連続した空間的な広がりを持った質点の集まり、つまり連続体としてモデル化することができます。連続体は、剛体(石のように、力を加えても変形ない固体),弾性体(ゴムのように変形に対してもとに戻ろうとする固体),そして流体(水や空気のように、変形に対してもとに戻ろうとしない液体や気体)の三種類に分けることができます。
※人文社会科学の抽象化の例は、
小室直樹『論理の方法』を参考にさせていただきました。
話をもとに戻します。
力学では、
以下の3つの法則を前提として、運動について、考えていきます。
1.慣性の法則
全ての質点は、外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止し続け、運動している物体は、等速直線運動し続けます。
例:電車やエレベータで止まったときや動いたときに体感できる現象
dP/dt=F
P=mv
mdv/dt=F
dv/dt=aとおくと、
ma=F
P:運動量、m:質量、v:速さ、F:力、a:加速度
これの意味は、質量mの質点に、力Fを加えると、質点は加速度aで運動するということです。
運動量については、また別の記事で扱いたいと思います。
3.作用反作用の法則
質点a,bがあり、aがbに力(作用)を及ぼすと
逆にbは必ずaに力(反作用)を及ぼして、作用と反作用の力の大きさは等しく、逆向きで、aとbを結ぶ直線の方向に働く法則です。
今回はここまでにします。次回は、ベクトルとスカラーや微積などの数学的な諸準備とこの三法則を前提として、運動量保存の法則を導きたいと思います。